さいきん、また気持ちが落ち気味で、コロナ鬱みたいなものだとおもう。
うちの地域は感染者が出たら、特定騒ぎが起こってる。
どこかのお店から出ると、従業員が感染するなんて、って批難の電話をかける人たちもいて。
こんな地域で感染したら、おしまい。
ここで暮らしていけなくなる。
地元の人たちがそう話す。
そんなのもあって、いつまで感染病から逃げきれるか、疲れたきぶんがまたもりもりしてきて、ウツみたくなった。
バイトがない日は、人がいない場所に車で逃げ込む。
途中の休憩場所も、地元のスーパーや飲食店よりぜんぜん人がいない。
車中泊ドライブの最中に、ぐうぜん、花火を見た。
大規模な花火大会はだいたい中止になってるけど、ローカルな小規模花火。
ほんとにぐうぜんに、通りかかった20分後の時刻に花火をやります、って看板見つけて、「えー。今夜だー。いまから見れるー」ってうれしくなって、車を停めて、はじまるまで暗闇で待ってた。
人と離れて見物してください、って看板が辺りにぽつぽつ立ってたけど、予告時間に集まってきた人たちは、そんなにいなかった。
15分間だけの花火。
一発ずつ違う花火がきれいで、マスクをしたみんなは歓声をあげずに静かに見上げてて。
ピカピカな月と星がチカチカきらめく墨色の空間に、花火の音しかしなくて。
でも終わったら、離れてる人たちからさざ波のような拍手が聴こえてきた。
ぜんぜん派手な音をたてない拍手が、遠く遠く離れた人たちの間で広がる。
それからみんな静かに帰ってって、暗いその場にわたしひとりになった。
拍手をしてたら、なんか涙が出た。
声もあげずに、静かに花火を見る夏。
こんな感染病の不安がはやくなくなるといいな。
静かな花火は、ひとときの癒しをくれて、それといっしょに、なんだかわからない静かなかなしみに包まれる。